この特集について
この特集は塚越亘によるテニスの特集です。ウインブルドンなど4大大会、デ杯、フェド杯日本戦、東レPPO、ジャパン・オープン、全日本などのビッグ大会会期中に限らず、毎日更新いたします。また、日本人選手の活躍も常時ピックアップ、その都度欠かさずお届けします。
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プロフィール
塚越亘
テニス・フォトジャーナリスト
1947年生まれ。1973年より30年以上にわたり世界のテニストーナメントを取材している。ITWA(国際テニス記者協会)会員。現在は(株)テニスジャパンの代表としてテニスFAX新聞の発行ほかテニス専門誌などでも数々の寄稿を行っている。
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テニス特集

伊達公子の快進撃

岐阜$50,000 カンガルーカップ
(特別寄稿 内田 暁)

大観衆のもと、伊達公子の快進撃が止まらない。

D007

伊達のテニスは、トーナメントを勝ち進むにつれ、確実にレベルアップしている。

それは、伊達が本人が
「トップ選手は、グランドスラムの2週目に入ると確実に目の色が変わる。そういう凄まじい物を見てきた」
というツアー生活の中で体に染み込んだ、プロテニスプレイヤーとしての性なのかもしれない。

予選の時には、フットワークやショットセレクトともに、正直、ブランクを感じる部分が多々あった。

だが昨日の中村戦では、試合立ち上がりからギアを数段階上げてきたのは明白。

ショットの精度やフットワークのみならず、試合への集中力、組み立ての妙、相手へのプレッシャーのかけ方など、いわゆる勝負師としての感性が、確実に研ぎ澄まされてきているのを感じた。

本日の試合も、伊達の試合への入り方は素晴らしかった。

昨日の中村戦も良かったが、試合を観戦していた浅越しのぶさんの目にも
「昨日よりも、さらに良かった」と映ったほどだった。

<<シングル準決勝>>
◎Q)クルム伊達公子 76(5),63 ●3)M.South(GBR)

コイントスで勝った伊達は、まず、サーブを選択する。

かつては、コイントスで勝ってもリターンを選ぶことの多かった伊達だが、
「持病だった肩の痛みも消え、安定感が出てきている」と、サーブに自信を持っている様子だ。

実際に第1ゲームは、そのサーブも好調で難なくキープ。

特に最後のバックハンドクロスは、相手が見送るしかない完璧なウィナーだった。

これで流れを掴んだ伊達は、第2ゲームをすぐさまブレーク。

その後、第7ゲームではデュースの末にブレークバックを許すが、
「リードしていたおかげで、ブレークバックされても直ぐに気持ちの整理ができた」と本人が話す通り、
続くゲームで再度ブレークに成功。

この直後に再びブレークバックを許してしまうが、
「試合が進むにつれ、サーブの威力が落ちるのも想定内」と、
ここでも精神的に揺らぐことなく、もつれ込んだタイブレークを7-5でモノにして、第一セットを先取した。

第二セットも、第一セット同様、先に伊達がブレークすると、すぐにサウスがブレークバックするという精神的に厳しい展開。

特に第二セットに入ったあたりからは、サウスは積極的にムーンボールやトップスピンを打ち始め、
ライジングで叩く伊達の速いテンポを崩しにかかる。

この「試合前に、コーチからアドバイスされていた」(サウス)という戦法はそれなりに功を奏し、
伊達は、遅い展開の中から相手のウィナーを許したり、
また、自ら高いボールを無理に打ってミスをする場面も見られた。

このサウスの戦いぶりを、伊達は試合後
「これまで対戦した日本人選手には見られなかった、したたかさ」と高く評した。

だが、「最初は下がって打ってしまったが、それらの高く弾むボールもライジングで捕らえることにより、上手く対処できたと思う」と本人が言う通り、
ゲームの中で状況を冷静に分析し、そして的確に対応することで、相手にとってほぼ唯一であったろう「伊達攻略法」を見事に封じて見せたのだ。

こうなると、精神的に優位に立つのは、当然伊達。

サウスの「決めなくては」という焦りは無理のあるショットにつながり、ミスが増えだす。

また伊達は、相手のセカンドサーブの際には、
コート内に深く踏み込んだり、
極端にフォアサイドを空けたポジションを取るなどして、相手に対し精神的に揺さぶりをかけていく。

この試合、サウスにダブルフォルトが多かったのは、決して偶然でも、伊達にツキがあった訳でもない。

最終ゲームは、伊達のスーパーショットのオンパレードだった。

観客たちが息を飲む程にネットスレスレのクロスの打ち合いから、
伊達は完全に相手の虚をつき、スライスをダウン・ザ・ラインに流しウィナーを奪う。

続くポイントでは、ハーフボレーを、ネット際5cm程の所に落とすスーパーボレーを披露。

さらには、フォアのランニングショットや、相手のサーブの威力を完全に殺すブロックリターンも飛び出す。

最後は、八方塞のサウスがダブルフォルトを犯し、こうして1時間34分の戦いに終止符が打たれた。

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試合後、伊達は
「明日は優勝、準優勝というより、自分の最高のプレイをすることだけに専念する。
そうすれば、結果はついてくるものだと思う。
ここまで来たことに満足せず、自分の持っているプレイを出すこと、
それプラス、爆発的なパワーを出して、流れを引き寄せるようなプレイもしていきたい」
と、今大会初めて優勝への意欲を露にした。

対するタナスガンは、
「私にとって、伊達さんは憧れの選手。
同じアジア人として、彼女のプレイを参考にしてきた。
だから、私のプレイは伊達さんと良く似ていると思う。
明日は、お互いにフラット系のショットを多様した、
テンポの速いエキサイティングな試合になると思う」と、
かつてのアイドル打倒に向け、静かに闘志を燃やす。


「テニスから離れた方たちにも、テニスの魅力を感じてもらえるような試合をしたいですし、
より多くの人に見に来たり、気にかけて頂きたいと思います」
と伊達が話す決勝戦は、シングルスが明日11時スタート。

その後、一定の休憩時間の後に、ダブルスの決勝が行われる。

あらゆる意味で、岐阜はアツい一日を迎えそうだ。

内田 暁 プロフィール
『スマッシュ』『スポーツナビ』などのメディアに執筆するフリーライター
伊達公子に魅了されテニスの世界に
デルレイビーチでの錦織圭の優勝
続くサンノセの錦織圭対ロディック
などを目にした数少ない日本人ライターの一人。
伊達の復活で予選からカンガルーカップに飛んできた


シングルス、ダブルスの本戦のドロー

(写真 てらおよしのぶ


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